太陽に抱かれて

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エピローグ

パリ左岸、中世の趣を残した街並みが続くサン=ジェルマン・デ・プレにほど近いとある通りに、一軒の画廊がある。 決して広くもなく、そして豪勢だとも言えない小さな小さな画廊だが、そこに飾られた絵画が見るもの...
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第四章 太陽に抱かれて 7

7「絵が届いていない?」 電話口の向こうで紳士はわざとらしく、声をひそめた。「それはおかしいですね。きちんと頼んだはずですが」 なんとも彼は俳優である。ももは肩で携帯を押さえ、鞄を探りながら、ふと頬を...
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第四章 太陽に抱かれて 6

6 滞在期限まで、あとわずかだった。 数えられるほどの日にちを実際にカレンダーで指折り確認しながら、ももは荷造りをし、不動産にアパルトマンの鍵を返す準備をしていた。荷物を増やさぬ努力の甲斐あってか、大...
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第四章 太陽に抱かれて 5

5 厳かな廊下を進み、やがて暖炉と中央に革張りのソファのある部屋に案内された。窓には緞帳がひかれ、天井からは目映いシャンデリアが吊るされている。「逃げるのか」 ジャン=クロードはアール・ヌーヴォーの美...
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第四章 太陽に抱かれて 4

4 思えば、あの丘に初めて訪れたときから、絵を描く男の姿に焦がれていたのだろう。ならば、あの心の揺さぶりが恋だったのか――いや、あれは、そう容易く表現できるものではない。そんな、もろい感情ではなかった...
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第四章 太陽に抱かれて 3

3 辺りはまだ、薄っすらと宵のヴェールを纏ったままだった。 シモンの寝息を確認してそっとベッドを抜け出すと、ももは足音を盗んで洗面所へと向かった。電気もつけず、微かに窓から注ぐすみれ色の明かりを瞳に浴...
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第四章 太陽に抱かれて 2

2 一時間ほど車に乗ると、久方ぶりにパリの景色がももを迎え入れた。 洗練された街並みが薄く灰がかった窓越しに過ぎ去っていく。まるで、映画が流れているかのような景色だった。 動揺のあまり憔悴しかけていた...
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第四章 太陽に抱かれて

1 光に満ちた、海辺の風景であった。 小さく船の浮かんだ海原に向けて、一人の女性が歩んでいる。さんざめく水面、黄金色に冴えた地面。画面右方は宵の|残滓《ざんさい》を感じさせる|幽《かす》かな|淡墨《う...
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第三章 光と影 11

11「ボンジュール! サ・ヴァ?」 その翌日、耳に届いた軽快な声に、ももは思わず声を上げて笑った。友人の沙希からであった。「うん、元気。そっちは?」 ももは洗面所で髪を|梳《と》かししながら答える。「...
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第三章 光と影 10

10「きみの話をしてくれないか」 行為のあと、シモンはももを見つめて言った。 その顔に表情はない。淡々としていて、ほんの少し事後特有の気だるさと|婀娜《あだ》っぽさを孕んでいる。彼女もそうであった。 ...
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